こんにちは。不登校支援センターです。
今回は解決事例をお伝えする
6回目となりますね。
今回のテーマは、
家族の関係についてです。
親御さんとお子さんとの間で、
中々会話ができない、
そんな状況に心当たりがある方も
多いのではないでしょうか。
実際、不登校と家族の関係というのは
非常に結びつきの強いテーマだと感じています。
ただ、誤解しないでいただきたいのは、
『家族関係が悪いと不登校になる』
というような因果関係がある
というわけではないのです。
家族関係が悪いからといって
必ず不登校になるわけではありません。
逆に、家族関係が良いからといって
不登校にならないというわけでもありません。
不登校を解決していくためには、
お子さんが一歩前に前進していくためには、
ご家族とのつながりは
とても大きなパワーの源となります。
今回はそうした家族の関係を
テーマとした事例をご紹介したいと思います。
「私は4人家族+1人の他人。」
当時中学2年だった女の子Aさんは、
このように親御さんに言っていたそうです。
きっかけは、
学校の勉強についていけなくなってきたこと。
Aさんは地元の進学校に入ってから
徐々に家族の中での疎外感を
感じていたそうです。
そして、ある日…
親御さんと学校の成績のことで
衝突します。
「こんな点数じゃ特進クラスから
落ちてしまうじゃない!
なんでできないの?」
「そんなことわかってる!
もういいから話しかけないで!」
以前は、あまり怒ることはなかったAさん
しかし…
この喧嘩をしてから
段々と学校を休むようになります。
そして、中学1年の秋ごろから
完全に学校に行かなくなってしまったそうです。
親御さんが説得を試みたり、
担任の先生から登校を促してもらったり、
スクールカウンセラーのカウンセリングにも
何度か連れて行きました。
でも…
2年目の新学期を迎えても
なかなか状況が変わらず…。
最終的に、当支援センターに
ご相談に来られました。
当支援センターのカウンセリングで
Aさんに初めてお会いした時の印象は
とにかく無気力な子だなという印象でした。
「もう何もしたくない、何も考えたくない。」
という状態でした。
誰とも話をしたくなさそうで、
Aさんが話しはじめるまでには
とても長い時間が必要な状態でした。
それでも、粘り強く、
(無理強いすることなく)
カウンセラーは語りかけました。
その結果…
カウンセラーの言葉にうなづいたり、
笑顔を見せたりと
少しずつ反応を
返してくれるようになりました。
そして…
自分の想いを話し始めると
今までせき止めていたものが
無くなったかのように、
溜め込んでいた気持ちを
どんどんと話してくれました。
——
親とは顔を合わせたくないし、
口を聞きたくない。
——
言ったところで
どうせ話なんて聞いてくれない。
——
家に居場所がないと感じる
——
もう死んだほうが楽かも。
——
など…
Aさんは、
親御さんと顔を合わせないように
昼夜逆転の生活をしており、
食事も1日1食だけ。
まったく食べない日もあったそうです。
1日の大半をベッドの上で過ごし、
スマホでゲームくらいしか
行動しなくなっていました。
そのような状況のAさんに対して、
カウンセラーは、
復学のアプローチはその後にして
まず心のケアを優先しました。
Aさんの好きなものや
興味のあるものの話をしながら、
人とかかわることで
楽しみを感じられること、
自分を理解してくれる喜び、
安心感を感じることを
大切にしていきました。
Aさん自身、本当は
誰かと話したいと思っていたようで、
打ち解けてからは
カウンセリングでは
活発に話をしてくれるようになりました。
しかし…
親御さんとは中々会話が出来ず、
部屋にバリケードを作って
閉じこもるようなこともありました。
その為、Aさんの心のケアと同時に、
親御さんからAさんへの
接し方、かかわり方も
カウンセリングの大切なテーマとなっていました。
・どのように声をかけるべきか?
・食事の時は呼んだほうがいいのか?
・お風呂が出来たと声をかけても
降りてこない時はどうすればいいか?
Aさんに対して、
今大切なことは何なのかを共有し、
そして些細な日常のことへの
かかわり方から始めていきました。
中々思うような反応が
返ってきませんでしたが
一か月ほど経った頃に
Aさんはようやく
自分の部屋のドアを開き、
父親と顔を向かい合わせて
話が出来るようになりました。
そうした親御さんに対する
Aさんの態度の変化をお聴きしながら、
今のAさんの気持ちは
どんなものだろう?
どのような姿勢を
親御さんに求めているのだろう?
とカウンセラーは
親御さんと一緒に考えていきました。
また一方で、
Aさんとカウンセラーでも、
親御さんへの考えや学校に対する思い、
考えを聴きながら、
その整理をしていきました。
勉強への劣等感、
親御さんに対する思い、
そして自分の人生をどう歩むか、
そうしたことを一つ一つ整理していったのです。
このAさんのケースは
親御さんとお子さんの気持ちの隔たりが
とても大きかったので、
関係の修復には
少しずつ進めていくこととなりました。
しかし…
家族との関係が少しずつ
良くなっていっている事を
Aさん自身も感じたのか、
自分の人生を歩むために
もう一度学校にチャレンジすると、
自分で決めたのです。
親子喧嘩が完全に
無くなった訳ではありません。
もちろん日々の生活の中で
衝突することはあります。
でも、以前よりは…
根深い亀裂を生むような
喧嘩ではないことを、
Aさんも親御さんも実感しています。
現在は、Aさんも学校に行き、
充実した学校生活を過ごしています。
親子間のすれ違いから
不登校になってしまうことは
少なくありません。
親御さんが子どもの事を
思っているその愛情が、
正しく伝わらないのは
悲しいことですよね。
親御さんがお子さんを
想う気持ちがきちんと伝わること、
そしてお子さんの気持ちが親御さんに
しっかりと伝わることで
問題が解決する場合も多くあるのです。
かかわり方を工夫するだけで、
親子の関係性を、
より温かみのある
強固なものに変化させることができるのです。
他の兄弟と同じように
接しているのになぜこの子だけが…
と悩まれる方もいらっしゃるでしょう。
しかし…
それは親御さんが間違っている、
というわけではありません。
兄弟と言っても違う人間。
一人に適した接し方が
その他全員に適している
とは限らないのです。
本人をよく見て、
その子の今の状態に合った接し方をすれば
状況は変わっていきます。
今回のAさんの事例が
お子さんへの新たなかかわり方が
見つかるきっかけとなれば幸いです。
今回も最後までお読みいただき
ありがとうございました。
いよいよ次回は
最後の解決事例のご紹介となります。
次回は、カウンセリングの中でも
最も重要となる
『信頼関係』
についてお話していきますね。